
ボンジュール!
あこがれと期待に胸をふくらませパリのアパートで最初にしたことは、電気を探すこと。
そうしないと電話をかけられない。まだお菓子はつくっていないが、パリに居ることがお菓子作りの始まりだった。
修行時代、ケーキの切れ端し生クリームタップリなものもある。
もったいないなーと、メレンゲマカロンの種でショーケースにデビューできなかったお菓子たちを再度、オーブンで焼き込み「はい、ムッシュ!」と親方に見せたら“目もくれたけど”食べてはくれなかった。日本人のパティシエの私にはおやつにしたり、友人たちの手みやげに重宝させてもらった。
パリではお店に入るとき、こちらよりもお客さまの方が「Bonjour!」と声を出されおだやかに嬉しそうにされる。
パリでは行くたびに店が変わっている。お菓子屋さんがカバン屋さんに…。実は、私の修行先も幾度も看板が変わっている。パリは古い人も古い店も都会に入れ変わって行く。よし、このラスクはボンジュール!と呼ぼう。
モーツアルト パティシエより
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